出産後は妊娠で急増した女性ホルモンが急降下しホルモンバランスが一気に崩れ、心のバランスを崩しやすいことが知られているが、特に支援もないまま育児をしていく、それが当たり前の状態は今も昔も変わりがありません。
「産後はジェットコースターに乗っているみたいだ」と表現した人がいて、2人の妊娠・出産・子育てを経験している私自身その言葉が痛いほど分かりました。ホルモンバランスの低下がジェットコースターで急降下するように例えられるような変化は後にも先にも産後だけだと思います。
そして、世の中の風潮は「出産したらすぐに母親になる」という考え方が多いと感じます。しかし現在、世帯の約8割は核家族であり、日常生活の中や身近な中で育児を経験することはもちろん、子どもと接することさえない状況で「出産したらすぐに母親」という考えはなかなかしんどいのではないと思います。前述したように身体の回復はおろか、目に見えないところでもホルモンの急減な変化という現象が起こっている中で、社会全体の認識を変える必要があると感じていました。出産直後は「母親・ママになるための準備期間」であるという共通認識を社会全体が持ち、母親自身が健やかな身体と心を取り戻してこそポジティブに育児が始められると思います。
健やかな身体と心を取り戻さないまま「子どもを産んだら当たり前に母親になるもの」という認識を持っていれば、産後うつを発症しかねません。日本では産後うつになる人が10人に1人と言われています。さらにコロナ禍を経て現在では4人に1人が産後うつを発症すると言われています。産後を取り巻く環境や文化は厳しく、多くの母親、家族が不安を感じています。そのため、産後は「頑張る」ことを避け「頑張りすぎない」ために、産後ケアの必要性を再認識し今回の企画を考えました。
今回、群馬県共同募金会さんの助成金を頂き実施することができました。
プレゼンテーションの際に「宿泊ではなく日帰りではダメですか?」とご質問をいただきました。当然、日帰りであれば宿泊して実施するのに対し回数も人数も多く実施することができます。しかし、宿泊にこだわったのは前述の通り母親・ママになるための準備期間であるため、休息とおいしい食事、専門家との会話や相談など提供し、安心し信頼できる環境を用意したいと考え宿泊型としました。宿泊型の産後ケアは県内にはなく、また病院等であってもとても高額であり誰もが利用できるものではない現状にあるためです。
その思いが通り、無事1泊2日で開催できました。
場所は「バリアフリーペンションまついだ森の家」さん。
https://www.normanet.ne.jp/~morinoie/index.html/
夜には小動物がたくさん出るという自然豊かなペンションを貸し切りで行いました。
助産師の他、看護師、作業療法士、その他ボランティアさん約10名近くで5組の親子のご参加がありました。子どもたちが来るとたちまち大忙しになりました。
はじめての場所でお母さんもお子さんも緊張されていた様子で、最初は表情も硬い印象でしたが徐々に私たちスタッフとも打ちとけ、私たちの腕の中ですやすや眠る子もいました。
お母さんたちにはリビングでくつろいでもらっている間に私たちはピザ作り、具だくさんでかまどで焼いたピザは格別でした。
その前後では、助産師による育児相談を個別に行いました。
受付時には育児の悩みを表出される方は予想通りいませんでしたが、大自然とおいしい食事、普段とは違う時間を過ごす中で、この時には様々な悩みを表出されるお母さんが多かったです。
なかには今まで誰にも相談できなかったと涙される方もいらっしゃいました。
お子さんはお預かりし、各々の部屋で休息取られる方やストレッチや、アロママッサージなど受けられる方もいらっしゃいました。
夜は見た目も美味しい、富岡市の「ジラソーレ」さんのお弁当
わたしも、子育て中ゆっくり味わうこともままならない状況だったことを昨日のことのように思い出しました。そんな中の見た目も、お腹も大満足のお弁当はつかの間のごちそうだったのではないでしょうか。
翌朝は「つばめベーグル」さんのベーグル、サラダ、スープセット
https://s.tabelog.com/gunma/A1005/A100501/10015789/
わたしたちスタッフは夜間も交代で起きて、泣いている子や、卒乳のお手伝い等を行いました。
今回、美味しい食事と大自然、そして育児中の親子さんの交流ができ、日帰りではゆっくり疲れを癒やすこともできなかったと思いますが宿泊という時間だったからこそできたと思います。
母親が育児の悩みを口にするのは容易なことではありません。時間をともに過ごす中で信頼関係が芽生えはじめて相談につながると思います。
だからこそ「宿泊型」の産後ケアを実施できてよかったです。
浄財をご寄付くださった皆様ありがとうございました。