~川原美穂さんの経験と未来へのエール~
きびる ”縁の下の力持ち” 川原美穂さん
多様化する社会には専門職の多様化が必要
今回は、NPOきびる事務局の川原さんのむすぶトークです。
NPOきびるでは助産師をはじめとする専門職ばかりではなく、ちょっと変わった経歴をお持ちの方もいらっしゃいます。
多様化する社会には専門職だけでは追い付いていけないと感じています。
そこで、今日は縁の下の力持ちでもあり、事務局の川原さんのむすぶトークをお送りします。
それでは川原さん、自己紹介をお願いします。
福岡県で犬のトイプードル専門のブリーダーとして活動しています。
会社員時代にバセドウ病を煩ったり不妊治療や流産の経験を通じて、犬の持つ癒しと命の尊さを実感し、多くの方々にその素晴らしさを伝えたいという思いから、この道を選びました。
NPOきびる事務局では、現場で活躍する方々を支える役割を担っています。これらの活動を通じて、一人ひとりが安心して暮らし、未来に向かって前進できる社会づくりに貢献したいと考えています。
私も保護犬はじめ2匹のワンちゃんとも暮らしているので、川原さんのお仕事には興味津々です。
川原さんの妊娠や出産、育児を通じて感じた「モヤモヤ」や「不安」を教えてください。
ありがとうございます。
子どもの頃から犬が大好きでした。これまでの色々な経験が糧になって、今本当にしたいことが実現できている感覚です。
妊娠出産育児期は、フルタイムで従事していました。高齢出産でもあったので、とにかく体がきつかったのを覚えています。
妊娠初期に原因不明の高熱が続き、トキソプラズマ感染だと分かったとき、医師から
「妊娠20週までに、諦めるか、産むか決断して下さい」
と言われ、愕然としました。
そこから通院と投薬が始まり、不安で眠れない日々もあり、この時期は体調が悪い日が多く、仕事と両立するのが非常に困難でした。
想像するだけでも大変でしたね。
出産時はどのような感じでしたか?
無事出産したものの、息子は、検査などのためNICU。
決められた時間しか面会できず、入院中は授乳室で搾乳して渡す日々で、
他の母親たちが授乳する姿を見るたびに自分の無力さを感じ、泣いたこともあります。
退院後、直接授乳できるまでは搾乳し面会に持って行っていました。
そんな息子は、ありがたいことに母子感染の影響なく無事に一ヶ月遅れで退院し、そこから同じ屋根での育児が始まりました。
一緒に寝れることの喜びは言葉に表せないくらいです。
1年間育児休暇を取得させて頂いたので、1年間は一緒に過ごせることの有り難さを噛みしめて過ごしました。
1歳になってから職場復帰しましたが、仕事・家事・育児の両立はハードでしたが、息子の笑顔が原動力でした。
一緒に退院できない、母子分離状態といいますが、その経験をされた方はやはり“無力さを感じた”と表現される方が多いですね。
働いている助産師や看護師は、そんなことないよって思うのですが追い詰められる方もいらっしゃいますね。
そういった不安や悩みをどのように乗り越え、誰に相談されましたか?
はい、助産師さんや看護師さんは「ゆっくり休めると思って、休んで下さいね」って。覚悟はしていたものの辛かったです。
ちょうど、同じ時期に出産した友人や子育て落ち着いた親友たちとお互いに状況を共有し、相談し合いました。
また、地域の子育て支援センターにも足を運び、少しずつ外出することで気分転換を図りました。友人や支援センターでの会話が、私にとって大きな支えでした。
わたしも知らない土地で、0歳ペアスクールなどで知り合ったママ友が大きな支えとなりました。今振り返ってみて、あの時に「知っておきたかったこと」や「しておけばよかったこと」はありますか?
産後は、立てないくらい体がボロボロで、特に膝が痛くて。。
数ヶ月は、子どもも小さくて外出も出来ず、「こんなものだろう。時間が経てば治るかな」と思って体調が悪くても誰かに頼ることができず、結果として自分を追い込んでしまいました。
今振り返ると、無理をせず、もっと支援機関を探して利用しておけばよかったと感じています。
特に膝の痛みなどは早めに受診しておけば、もっと楽に育児ができたかもしれません。
やはり母親は自身の体より子供が最優先になるものですね。
本当に母は偉大だと感じます。
そんな経験をされた川原さんだからこそ同じ状況下で苦しい思いをされている方々へメッセージを残せると思います。
その方々へ何を一番伝えたいですか?
自分の体調を犠牲にしすぎず、無理をしないでください。
妊娠や育児はとても大変ですが、周りに頼ることを遠慮せず、支援を受けることが大切だと思います。
助けを求めることは決して弱さではなく、強さの証です。
私も改めて支援にあたる立場として胸に響きました。
NPOきびるでは特に父親支援も今年度から力をいれております。
“受援力”というそうですが、周りを頼る、SOSを発する力を当たり前にしていきたいと思っています。
そんな一助になりますように今後ともお力を貸していただくとともに、ますますのご活躍を心から祈念申し上げます。ありがとうございました。