子どもと母親に寄り添う人との対談・インタビュー

むすぶトーク ココロとカラダとときどきいのちのお話

 
NPOきびるは2020年に設立して以来、妊娠期の方々だけではなく、様々な年代の方の悩みや心配ごとに寄り添ってきました。そんな活動をしている中、望まない妊娠や、未妊検(妊娠をしているが検診を受けていない状態)などの問題を抱える女性が思った以上に多いことに驚きました。

これらは経済的な問題以上に「じぶんを大切にする」「じぶんのことは自分で守る」といった、自分自身を大切にすると言った根本的な自己肯定感や健康意識の欠如にあると感じました。

「じぶんを大切にする」「じぶんのことは自分で守る」という自己肯定感を向上させることは、自分以外の人も大切にすることにもつながります。

また婦人科系がんの死亡率は年々上昇し、子宮頸がんに関しては、低年齢化もしてきています。(図1)早期発見・早期受診につながれば治療の恩恵を受けられることはもちろん、妊娠を望む場合には、妊娠出産をあきらめないでよい時代になってきているため、“自分は大丈夫”“自分はがん家系ではないから”など安易な考えや間違った自信などではなく、正しく知識を得ることは重要だと考えました。

そこで、群馬県共同募金会の「困りごとを他人事にしない活動」で助成金を頂くことができ、高崎、前橋、桐生、みどり市の4か所で小中学生から大学生、子どもを持つ母親世代まで、各世代に研修会を開催しました。
 

図1

第1回開催 高崎市

対象:小中学生
 

 
実際に赤ちゃんの模型を用いて、赤ちゃんができるまで、赤ちゃんが成長する過程などお話しました。子どもたちは皆興味津々で、小学6年生の女の子は夏休みに自分なりに考えたいと、きびる推薦の図書を抱えきれないくらい借りて帰っていきました。後日、お母さんにお話を伺うと、真剣に本を読み、率先してお手伝いなどしてくれるようになったとお聞きしました。性教育とお手伝いなど一見関係なさそうですが、これは意外とよくお聞きすることで、いのちの誕生の奇跡や神秘に触れ、母親がいかに自分を生み育ててくれているのか、普段当たり前になって気が付かないことを自身で気が付くきっかけにもなるからだと思います。

第2回開催 前橋市

第2回目は看護師や保健師など、今後性教育を実施する方向けに行いました。

厚生労働省「人口動態統計2020年」「令和2年度の人工妊娠中絶数の状況について」によると2020年度、日本では14万5,340件の人工妊娠中絶が行われました。一日あたり398件のペースで人工妊娠中絶が行われていることになります。

全体の8.4%にあたる1万1,058件が20歳未満で、1日に約30人の10代が妊娠中絶しています。

日本財団の「18歳意識調査(第39回)性行為」において、「性に関する知識が十分にある」と答えた10代は24%であり、若者へ十分な性教育が実施されていないことが、若者の妊娠中絶の要因の一つであると考えられます。
 

第3回開催 桐生市

桐生市にあるコワーキングスペース「ココトモ」で大学生・高校生・中学生に向けて、自分を大切にするためのカラダの仕組みやケアについて研修会を実施した。その少し前にこのような記事を目にしました。

コロナで休校になった自粛期間、10代女学生の妊娠相談が激増! その根本原因は」という記事が2020年8月、PRESIDENT ONLINEに配信されました。

 記事によれば、新型コロナウイルスの影響で各地で学校が休校になった期間、「自身が妊娠しているのではないか」という10代からの相談が増えたといいます。

 ある保護者の話では「群馬県内のある公立高校などでは望まない妊娠で中退していく生徒が毎年1人、2人いるそうです」と驚きの報告もあります。

 性に関しては家庭や教育現場でもタブー視されがちです。インターネットには性に関する情報が氾濫していますが、その情報が正しいものなのか、誤ったものなのかは、10代の子どもたちにはなかなか判断が難しい状況です。医学的な根拠に基づいて、性に関して正しい情報や知識を持つことは自分のカラダを守るためにも必要です。また中高大学生が参加しやすいように、学校が終わってから開催しました。中には男子学生もいましたが、「こんなに女性が大変だと思わなかった」「自分にできることを考えていきたい」などの言葉も聞かれ研修会の効果を実感しました。
 

第4回開催 みどり市

みどり市での開催も今後教育的立場にある方々を中心に行いました。理由は前橋で開催の時と一緒で、専門職や教育的立場にある方々にお伝えすることで、子どもたちへの教育が充実するためです。
 

 
全4回の“助産師から学ぶ女性のココロとカラダの研修会”は無事終了しました。

新聞記事にも数回取り上げていただき、社会の関心の高さも感じた。一方で子どもたちは“恥ずかしい”“だれも教えてくれない”などの言葉が聞かれ、親世代は“必要だと思っているがどう伝えていいか分からない”“私も習ってきていないし”など双方の気持ちのすれ違いを感じました。そのため、全4回様々な地域や年代で実施できたことは、医学的な根拠にもとづく性に関して正しい情報や知識を持つことのお手伝いができたと感じました。